狛犬の鳴き声

近江八幡のまちづくりに取り組む中で、考えたこと、学んだこと、もやもやを記す内訟録。

ひとも地域も何を求めるか/『幸せのメカニズム—実践・幸福学入門』

■便利・快適志向から幸福志向へ

「これまでの街づくりは、便利さ、快適さ、安心・安全といった、人々の基本的な欲求を満たすことに重点が置かれ過ぎていて、幸せの四つの因子を育むようには計画されていなかった。だから、都会では、隣の住民が何をしているかわからないし、電車で隣り合った人とは目も合わせないような、「幸せ遮断国家」づくりになってしまっていた。人間中心デザインをしていたつもりで、実は人間を無個性化する悪だくみになってしまっていた。もちろん、時代の要請がそうさせた。時代の必然だった。 」p217

 まちづくりの取り組み、特にissue+designの取り組みでは「便利・快適」を目指す地方のまちづくりから、「幸福」を目指す取り組みへと、明確な目標を打ち立て各地でワークショップから実戦へと展開している。

ほとんどのまちづくり関連書籍、取り組みが目指す方向性が、地域の「幸福度」を高めようとする取り組みになっているように感じている。

幸福という指標化しにくい感覚的なものを、今後どう実戦に生かすか、そのヒントが詰まった一冊。

 

■21世紀と江戸時代後期

本書では、「これからの時代は、江戸時代後期のような時代」と指摘している。人口が増えない、GDPも横ばい。しかし、江戸時代後期は多様な文化が栄えた時代だった。

21世紀、2010年以降はどうだろうか。地方では人口減少が加速し、文化の多様性が失われつつある。間違いなく10年後にはかなりの数の無形文化財と呼ばれるような祭礼行事やしきたりは無くなってしまう。

本書でも指針を出しているが、便利や効率を追い求める都市計画やまちづくりは今後目指すべき指針ではない。地域ごとに小さな経済が成立し、住民の幸福度を高めるふるさとづくりが必要である。

各地域の文化の伝承をどうするか、「長男だから残れ」という慣習では若者は説得できない。地元に残った「大先輩」たちと若い世代が一緒に地域をどうするか考え行動する取り組みを仕掛けていきたい。

「協創を目指すことは、幸福を目指すこと」p237

 

幸せのメカニズム 実践・幸福学入門 (講談社現代新書)

幸せのメカニズム 実践・幸福学入門 (講談社現代新書)